上ではこの人がまだ『突然レア様に抜擢された謎の教師』くらいの認識でしかなかった頃、賊のあいだでは有名な『灰色の悪魔』だと知っていた俺は、弱みを握れば利用出来るかと思い色々と仕掛けた。
始めは確かにそのつもりだったが、だんだんと、どんな反応をするか見てみたいという興味の方が上回っていた。何をしてもまるで効かなかったけどな。腕を絡ませてみても無反応だったときは驚愕を通り越して落胆したぜ。たまに昼間の修道院に出るとヒルダやベルナデッタあたりが腕を絡ませているのを見かけるから、それと同等と思われたのか。ベルナデッタは絡ませるというより縋りついていたな。……思い出すと苛々してきた。
その、多方面から誘われているくせに超鈍感な先生は、腕を組んで顎に手を添え、身体ごと首を傾げていた。
「誘う? 俺は何かに誘われていたのか?」
なんでそこを疑問に思うんだ。誘われてたことさえ気付いてなかったのかよ。
あの歌姫ドロテアが「先生とふたりっきりで話したら自信無くした」と言ってた理由が分かった。
超级喜欢看……